脂溶性ビタミン
ビタミンA(レチノール)

■ビタミンAは視覚機能に関係する物質で、欠乏すると夜盲症(トリ目)になります。急に暗い場所に入った
 とき、目が暗さに慣れるまでに長く時間がかかるのは、ビタミンA不足の初期症状です。また、ビタミンAは
 目、気管、皮膚などの粘膜の形成、機能にも関係しています。そのためビタミンAが不足すると、結膜炎
 や風邪にかかりやすくなったり、皮膚がカサカサになったりします。


■ビタミンAの働き

★目の乾燥感の緩和や夜盲症などに効果がある

★脂質の酸化を抑制し、肥満によい
 ビタミンAはさまざまな作用をもつビタミンですが、体内で脂質が酸化されにくくする働きをもっています。
 つまり、余分な脂質が体内にたまるのを防ぎます。ビタミンAには動物性食品に含まれるレチノールと、
 野菜になど植物性食品に含まれ、体内でAに変わるβ-カロテンがありますが、抗酸化作用は植物性の
 方がすぐれています。


★上手に摂取するには
 植物性のビタミンAは脂肪によってビタミンAとしての効果を発揮するので、油脂と一緒に摂りましょう。
 動物性のビタミンAは、摂りすぎると肝臓の障害などが出ますが、植物性にはその心配はありません。
 特に緑黄色野菜は積極的にとりましょう。


■補給を特に心がけた方がよい人
  ○うす暗い所で物が見えにくい人 
  ○目の乾きが気になる人
  ○妊婦・授乳婦


■主な欠乏症
  ○夜盲症 ○角膜乾燥症

■ビタミンAが多く含まれている食品
  ○鶏(肝臓) ○ぶた(肝臓) ○あんこうきも ○うなぎ ○牛(肝臓) ○ほたるいか ○ぎんだら 
  ○すじこ  ○バター ○うずら卵  ○パセリ ○春菊 ○ほうれん草 ○ニンジン ○かぼちゃ 
  ○にら  ○のり

■栄養所要量  600μgRE/日
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ビタミンD
(カルシフェロール)

■ビタミンDは、カルシウムの吸収、沈着が正しく行われるために必要です。乳幼児期に不足すると
 背骨や足の骨が変形したり、頭の骨が薄くなる“くる病”に、大人で不足すると骨がもろくなり、変形
 して痛む“骨軟化症”
になります。
 特に妊産婦や高齢者はビタミンD不足に陥りやすいので要注意です。

■ビタミンDの働き

骨、歯の発育不良に効果があります。
 骨・歯の発育不良に効果、また、カルシウムの吸収、沈着するために必要なビタミンです。
 ビタミンDは、体内で活性型となり、腸管でのカルシウムの吸収を促進します。骨は日々、作り変え
 られていますがこれにもビタミンDが働いています。健康な骨を維持する為に一生を通して不足さ
 せたくない栄養成分ですが、特に高齢者は、骨粗しょう症の予防、治療の為に積極的なビタミンD
 の摂取が必要です。


■補給を特に心がけた方がよい人
  ○骨や歯の弱い人  ○妊婦・授乳婦  ○老年期の人

■主な欠乏症
  ○骨粗しょう症 ○くる病

■ビタミンDが多く含まれている食品
  ○きくらげ ○あんこう ○タタミイワシ ○いわし丸干し ○すじこ ○しらす干 ○クロカジキ 
  ○べにざけ  ○身欠きにしん ○秋刀魚 ○うなぎ


■栄養所容量  2.5μg/日

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ビタミンE
(トコフェロール)
■ビタミンEは妊娠・出産と関係の深いビタミンとして発見されました。ビタミンEには末梢血管を拡張し、
 血液循環をよくする働きもあります。冬、しもやけや冷えに悩まされる人は、ビタミンEの補給を心が
 けると良いでしょう。さらに、最近とくに注目されているのがビタミンEの抗酸化作用です。体内で脂肪
 が酸化すると老化や動脈硬化を進める有害物質が出来ますが、ビタミンEを十分にとっておけば、
 これを防ぐ事が出来るのです


■ビタミンEの働き(Eと生活習慣病/Eと筋肉疲労/Eと老化)
◎ビタミンEと生活習慣病予防

★過酸化脂質が生活習慣病を引き起こす
 人の体は、約60兆個とも言われる細胞が集まって構成されています。細胞は細胞膜で保護されてい
 ます。その細胞を作る重要な成分の一つが不飽和脂肪酸です。
 不飽和脂肪酸が酸素と結び付いて酸化されると、過酸化脂質ができます。この引き金になるのがフリ
 ーラジカルです。過酸化脂質が発生すると、次々に連鎖反応が起きて周囲の不飽和脂肪酸を過酸化
 脂質に変えていってしまうのです。
 細胞膜を構成している不飽和脂肪酸が過酸化脂質に変わると、細胞は正常な機能を失ったり、死ん
 だりします。その結果、臓器に変調や病気が起こります。動脈硬化、動脈硬化から起こる脳梗塞、心
 筋梗塞、そしてガンの原因の一つとして過酸化脂質があげられています。


★ビタミンEは過酸化脂質の発生を抑制する
 ビタミンEには色々な働きがありますが、最も注目されている重要な働きの一つは、不飽和脂肪酸を
 酸化から守る抗酸化作用です。つまり、過酸化脂質が出来るのを防ぐ働きです。抗酸化作用を持つ
 ビタミンEの他にビタミンCやβ−カロテン(プロビタンA)があります。それぞれ活躍する場所が違い
 ますが、ビタミンEはすべての細胞を守っています。またビタミンEは、ビタミンCと共同で働くことでよ
 り優れた効果を発揮します


★ビタミンEは動脈硬化発症の予防・改善に効果
 動脈硬化のおきた血管の内壁は、コレステロールが異常に沈着していたり、膜の酸化によって細胞膜
 の肥厚や損傷がおこっています。このため血管は弾力を失い、血液が流れにくくなっています。
 また、動脈壁の内側に損傷ができると血小板が集まって修復します。これを繰り返していると、粥状硬
 化はねばりやすく、ここに血小板、赤血球、白血球や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)などが
 沈着して、大きくなります。この塊が剥がれて流れ、更に細い血管をふさぐことがあります。血栓です。
 血栓が血管につまり、血流を止めてしまう状態が梗塞で、脳におこると脳血栓、心臓におこると心筋梗
 塞になります。ビタミンEは血管の細胞膜のダメージを防いで血管そのものを健康に保ち、動脈硬化を
 抑制します。その一方で善玉のコレステロール(HDLコレステロール)を増やす働きを持っています。
 善玉コレステロールは粥状硬化の原因・悪玉コレステロールを運び出し、血管内を浄化します。
 つまりビタミンEには血管本体の健康を維持する作用と同時に、血管を健康に保つ環境を整える作用
 があるのです。ビタミンEには動脈硬化の予防とともに、おこってしまった動脈硬化を改善する働きもあ
 ることが確かめられています。

★ビタミンEで動脈の若さが保たれる
 ビタミンEの投与で粥状硬化がおきた部位、および血液中の過酸化脂質が減る事が確認されています。
 また、ビタミンEを投与した群としない群とを追跡調査した結果、2年後にE投与群では血管の弾力性が
 ましているのに、対象群では動脈硬化が進んだことも報告されています。この研究でビタミンEが動脈
 硬化を予防するばかりか、すでに進行していた動脈硬化を逆戻りさせて血管を若返らせる力がある事
 がわかりました。


★血液中のビタミンE量が少ないと脳卒中の危険
 脳卒中を起こした人の血液中のビタミンEの量は、大半が正常な人の半分以下だったという発表があり
 ます。日本でも脳卒中や心筋梗塞の発作が起きた時には、血中のビタミンEが急激に減り、逆に過酸化
 脂質が急に増えると報告されています。脳卒中には、血栓ができて酸欠になる脳梗塞と、血栓ができて
 血管が破れる脳出血とがあります。脳のどのあたりにできるかで症状や障害が異なりますが、ひどい場
 合には死に至ったり、体に麻痺が表れたりします。脳梗塞も脳出血もビタミンEを十分に摂る事で予防で
 きると言われています。


★心臓の危険率はビタミンEの摂取で低下する
 心臓の周囲にちょうど冠をかぶせたようにぐるりと取り巻いている太い動脈を冠状動脈といいます。
 ここで動脈硬化が
 進み、血栓ができて血流を止めてしまうと心筋梗塞になります。血流の停止が一時的に起こった場合を
 狭心症といい、激しい痛みにおそわれます。高血圧、高脂血症、動脈硬化などのある人は、心筋梗塞や
 狭心症を併発しやすいので十分な注意が必要です。


★糖尿病の合併症の予防にビタミンEが効果的
 糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足するために、糖をエネルギーに変える
 ことが出来なくなる病気です。糖尿病になると、高血圧症、白内障、網膜症などを併発しやすくなります。
 ビタミンEは、これらの合併症の予防や治療に使われて効果をあげています。また、ごく初期の糖尿病
 者に大量のビタミンEを投与したところ、糖尿病の進行が止まったという報告もあります。
 糖尿病にかかってしまった人も、予防したい人もビタミンEを十分に摂るようにしてください


★ビタミンEが不足するとガンになりやすい
 ビタミンE欠乏の動物にガンが出来やすいことは、よく知られています。また、大気汚染やスモッグなどが
 がんがん出来やすい環境で動物を飼育し、ビタミンEを大量に投与したところ、ガンの発生率は投与量
 に比例して減少し、長生きしました。ヒトを対象にした研究でも、血液中のビタミンE濃度が低いとガンの
 発生率は約2倍になり、ビタミンEとセレンの両方の濃度が低い場合には、危険率は10倍になるという
 報告がある。


★ビタミンEはβ-カロテン、ビタミンCと共同でガンを予防
 ビタミンEは単独でも発ガン物質に対抗して細胞を守る力がありますが、β-カロテン(プロビタンA)や
 ビタミンCとチームを組むと、更に強力な連携プレーが展開されます。ビタミンCとEは抗酸化物質として、
 ガンの原因であるといわれるフリ−ラジカルを破壊します。ビタミンCは細胞内外の水溶性部分で働き、
 ビタミンEは細胞膜に入り込んで自ら酸化されることで膜の脂質の過酸化を抑制します。ビタミンCは
 酸化されたビタミンEを還元して復旧させる働きもあります。


◎ビタミンEと筋肉疲労
★オリンピック選手にはビタミンEは必要
 スポーツ選手へのビタミンE投与が一躍話題になったのは、1972年のことです。オーストラリアの水泳
 選手団が驚異的な記録をだした背景にはビタミンEの投与がありました。日本では、1968年のメキシコ
 オリンピックに参加した選手団がビタミンEを持参しています。標高が高く気圧が低い現地の低酸素に対
 応する為の策でした。長距離選手を対象にビタミンEを大量に飲む群と偽薬を飲む群とに分けてタイムを
 調べると、ビタミンE群は長距離になるほど効果がはっきりと表れます。ビタミンEは持久力をつけるビタ
 ミンなのです。


★ビタミンEで疲労回復が早まる
 長時間運動や作業をすると、血液中に乳酸やアンモニアなどの疲労物質が増えてきます。ビタミンEを投
 与すると、これらの疲労物質が早く消失し、疲労回復が早まります。
 ビタミンEで持久力がついたり、疲労回復が早まる理由として、一つは抗酸化作用があげられます。ビタミ
 ンEが十分にあると不飽和脂肪酸の酸化が抑制されるので、酸素を効率よく利用できます。その結果、
 筋肉本来の力が発揮できるというわけです。また、ビタミンEには、血行を促す働きがあります。血行が促
 されれば体のすみずみまで十分に酸素を運ぶことができ、エネルギーを補給できます。血行が良くなると
 疲労物質も早く運び去られるので、疲労回復が早まるわけです。スポーツ選手でなくてもビタミンEを上手
 に利用すれば、スタミナのある疲れ知らずの体になれそうです。


◎ビタミンEと老化

★中年期以降、特にビタミンEの摂取が必要
 過酸化脂質は様々な病気や老化の原因になると言われています。血中の過酸化脂質の量は、40歳を
 過ぎると急に増加します。過酸化脂質の量と老化の進行は比例しているのです。血管をはじめ体を若く
 保つには、40歳を過ぎたら意識的にビタミンEを摂取して、過酸化脂質を減らす工夫をする事が大切で
 す。


★ビタミンEは精力減退を防ぐ
 ビタミンEを多量に与えたネズミと普通の餌を与えたネズミを調べると、普通の餌群では老化に伴って睾
 丸や卵巣が萎縮していくのに、ビタミンE投与群では正常に近い状態でした。また、ビタミンEが欠乏して
 いるネズミは繁殖力を失うという実験結果もあります。ビタミンEには女性ホルモンの分泌をスムースに
 する働きがあるのです。


関節のこわばりや痛みにビタミンEが効く
 年をとると膝関節の軟骨がすり減るために、痛みやこわばりを感じることがあります。ビタミンEを大量に
 投与すると、痛みやこわばりがとれたという研究があります。ビタミンEの投与で血液の循環がよくなり、
 関節にも十分な栄養が行き届くようになったためだと考えられます。


★老人班(リポフスチン)の沈着を防ぐ
 年をとると皮膚に特有の老人班が現れてきます。この老人性のシミは、リポフスチンという色素が沈着し
 てできたものです。リポフスチンは皮膚ばかりか神経組織や心筋にまで沈着することがわかっています。
 リポフスチンがネズミの中枢神経に沈着すると、記憶力や神経などが衰えて迷路走行が出来なくなりま
 す。リポフスチンは、ビタミンEがないと急激に溜まっていきます。ビタミンEを普段から十分に摂取してい
 れば、脳内の血流もスムーズですし、リポフスチンの沈着も防ぐ事が出来ます。


★上手に摂取するには
 充分なビタミンCの摂取で、ビタミンEの抗酸化作用が高まるので、併せて摂りましょう。

■補給を特に心がけた方が良い人
  ○肩のこる人 ○冷え性の人 ○月経不順の人 ○老年期の人 ○アルツハイマー型痴呆症の人

■主な欠乏症
  ○自律神経失調症 ○溶血性貧血

■ビタミンEが多く含まれている食品
  ○ひまわり油 ○アーモンド ○にじます ○ヘーゼルナッツ ○うなぎ ○西洋かぼちゃ 
  ○揚げせんべい  ○ほうれん草 ○あんきも  ○はまち ○モロヘイヤ


■栄養所要量  10mgα-TE/日
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ビタミンK
(フィロキノン メナキノン)

■ビタミンKには、緑葉野菜に含まれるK1と、微生物によって作られるK2があり、その効力は同等です。
 K2は発酵食品
の納豆などに豊富ですが、体内でも腸内細菌によって合成されます。
 ビタミンKは、血液を凝固させるプロトロンビンという物質の合成に深く関わります。プロトロンビンは出
 血時には血液を凝固させて血を止めますが、血管内では血液の凝固を抑制するという相反する2つの
 作用をもつ物質です。この物質が肝臓で作られるときに、ビタミンKが不可欠です。
  ビタミンKは、骨の健康維持にも重要です。ビタミンDがカルシウムを必要とする生理作用に応じて、骨
 から血液中にカルシウムを送り出すときに、ビタミンKはカルシウムの支出を抑制します。Kが不足する
 と支出が増え、骨がもろくなってしまいます。骨粗しょう症の予防のためにもビタミンKは欠かせません。
 食事や腸内細菌からの供給で不足することはありませんが、抗生物質を服用していたり、出血性の病気
 がある場合は注意が必要です。また、血栓症の人、血液凝固剤を服用している人はビタミンKの摂取が
 制限されます。

■ビタミンKの働き

★血液の凝固に関与し、止血に役立ちます

★上手に摂取するには
 食品から摂るほか、体内に吸収されるビタミンKの約半分は、腸内細菌によって合成されてます。
 抗生物質を長期服用している人は、腸内細菌からの供給は期待できないので、食事でしっかりとります。
 抗血液凝固剤を飲んでいる人はビタミンKの摂取が制限されています。

■補給を特に心がけた方がよい人
  ○内出血しやすい人  ○抗生物質を飲んでる人  ○授乳婦

■主な欠乏症
  ○出血性疾患

■ビタミンKが多く含まれている食品
  ○引き割り納豆 ○納豆 ○モロヘイヤ ○乾燥わかめ ○あしたば ○かぶ(葉) ○ほしひじき 
  ○ほうれん草  ○春菊 ○にら


■栄養所要量  0.065mg/日

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